27 May 2017



新しいレッスン

 先週の日曜日は、明日館のクラスがありました。お教室を始めて満11歳。おかげさまでこの夏、12年目に入ります。

 この日は桜に続くバラの花で、明日館の前庭はご覧の通り。毎年訪れるこの至福の季節に感謝しながら、胸いっぱいにピンクの空気を吸い込みました。私たちのレッスンはいつも日曜日だから、ほぼ毎回ウェディングの風景を目にしますが、その華やぎのシーンが一層胸にしみる季節でもあります。

 


 今まで月に一度のペースを守ってコツコツ進んできた HAC (Hiro's Art Class) ですが、実はこの6月から新しいクラスを始めることになりました。水彩だけを行なうレッスンです。

 今まで通り午前から午後の、その日のうちに完成するコラージュと水彩のミクストメディアレッスンを継続しながら、もうひとつ、午前の2時間、水彩だけに集中するレッスンを設けたのです。

 水彩をお教えしたい気持ちはずっとずっとあって、でもコラージュも愉しいし、企画を先延ばしにしてきたんですが、そんなことしていたらいつまでたっても実現できないことに気付き、明日館のスタッフのFさんに相談してみました。すると幸運にも第4水曜日の午前のお教室が「水彩なら水曜日でしょう」とばかりにずっと空いていた。これはもうやらなくちゃ! 運命の糸(?)を感じた途端、私の重い腰はアレレ、旅に出るビルボ・バギンズさながらに速攻で持ち上がるのでしたー!(説明くどくて、ゴメンナサイ。)

 その名も Hiro's Illustration Class。略して HIC。

 余談ですが、今までHACといえば、静岡・神奈川地区では某薬局チェーン店の名前として有名だったんですけど、なんと近年の合併で名称が変わり、もはや HAC ではなくなった様子。なんとなく肩身の狭さを感じながら HAC、HAC と使わせてもらっていたのが、これからは胸を張って「ハックです!」と言えそうです。

 ハックとヒック。「鏡の国のアリス」に登場する、双子のトゥイードル・ディーとトゥイードル・ダムみたい。なんだかいいカンジ・・・。

 ・・・と始まる前からそんなことで悦に入ってないで、生徒さんにお集まりいただく努力をしないといけません。
 



 レッスンの内容は、私が11年にわたってイギリスの雑誌「COUNTRY LIVING」に描いていた小さなイラストレーション。これをお手本に、水彩ってこんなことができるんですよ、というテクニックをお伝えしたいと思っています。

 私のイラストレーションは、対象を単純化することがまず大事な要素で、ひとつひとつの絵に複雑さはありません。刺繍デザイナーの青木和子さんとお話していて、「そこまで行くのがタイヘンなのよね」と仰っていただいたのが忘れられない。そこが青木さんのお仕事との共通点なのだとわかり、先輩からの温かい励ましがありがたかった。

 単純化しながら、対象の「らしさ」を表すこと。本物より一層本物らしくなるように・・・。

 「そこまで行った絵」のすべてには、試行錯誤の後にわかった「描き順」があります。水彩の難しさは、濃い色の上に淡い色を載せられないこと。思った絵に仕上げるには、描く手順がとても大事なんです。

 色の作り方、息遣いのようなものもお伝えしたいので、個人レッスンに近い試みもしたいと思っています。ですので定員は11名と少なくしました。そして水彩はこう見えてエネルギーを使います。人間、集中できる時間は短い。なので2時間。宿題を出させていただき、次回に講評もいたします。

 だらだらと書いてきた内容をまとめますと・・・

  レッスン名称: Hiro's Illustration Class (HIC)
  内容: 季節にちなんだ小さな水彩画の制作(宿題あり)
  日時: 毎月第4水曜日 10:30~12:30
  会場: 自由学園明日館 小教室マニャーナ
  受講費: 3回で13,500円(資料の精細プリント画を含む)
  定員: 11名
  ※画材をお持ちでない方は、講師おススメのものを事前にご注文いただきます。

 コラージュクラスと違い、可能な限り毎月のご参加をおすすめします。継続して練習することで、どんどん世界が広がってゆきますから。
 
 のちほど、Lesson のページにあらためて詳細をUPいたしますね。第一回は6月28日です。お手紙や葉書きの隅にちょっと小さな絵を描きたい・・・。そんなお気持ちをもし持たれたら、ぜひ! お気軽にお問い合わせください。




 こちらは、5月のレッスンでの生徒さんの作品より。バリエーション豊かに、様々なドレスが生まれました。外のバラにも助けられたでしょうか。愉しいレッスンでした。中央はおまけ。余った素材から作る、グリーティングカードのアイデアです。

 コラージュと水彩のミクストメディアレッスンも、引き続き愉しいアイデアを、絞っては披露、絞っては披露、してまいります。こちらもどうぞ、よろしくお願いします! (6月のHACはジュエリーがテーマです♪)

9 May 2017



私のホリデイ

 皆さま、5月の休日はいかがお過ごしだったでしょう。

 黄金週間とは言え、10人いたら3人ぐらいは仕事だったと思うし、私のような者はこの仕事を始めた頃からずっと、世の中の休日とは縁がない。

 とは言えご近所の気配もどこか違うし、なにより毎年好天に恵まれる確率の高い一週間です。朝の目覚めもいいし、一段と長くなってきた日が暮れるのが寂しいし、仕事が手につかず気もそぞろな毎日でした。

 と言うのも昨年、庭仕事の役目が次第に自分に移ってきたのをいいことに、思い切って小さな庭(桐原春子さんの言葉を借りると、猫の額より狭いまさに「猫の鼻」)に、芝生の種を蒔いた。ターフを敷くほど広々とした場所ではないので、種がいいと思った。それがうまく根付いた。庭への思いがぐっと高まっているこの頃なのです。

 寒さに強く、冬も青々の西洋芝。春の始まりとともに多少ハゲていた部分も埋まってきて、ヨシヨシです。自分的にはすごくいい感じ。あくまで自分的にで、世の中的素敵なガーデンとは程遠いのは自覚しています。でもどんなにささやかでも、庭づくりは愉しくてうれしい。

 芝刈りは、リョービのバリカンで30分もかからない。地面だったときに草取りをするよりずっと楽です。頑なな地面派だった家族も、初夏の日差しとグリーンが気に入った様子です。




 ところでこの写真を Instagram にUP するんで、「木漏れ日」の英訳を調べたら、無い、と言うことを知りました。一言で木漏れ日を表現する言葉がないのです。

 こんな風に、あらゆる言語には、他の言語で表現できない言葉と言うのが多数あると言います。一時話題になった「もったいない」もそうですね。そういう言葉ばかりを集めた絵本があるそうだから(これも Instagram で知りました)、こんど読んでみたいです。




 バラは3種類育てています。↑はロサ・ムタビリスという中国の原種。ひと重の簡素な花が、様々な色で目を愉しませてくれる。今年は白い花も咲いています。淡いサーモンピンクは2日目には深紅に変わる。見ていて本当に飽きません。




 数年前に、芝と同じく突然思い立って敷いたレンガも、味が出てきました。特に日が陰った日にはイギリスを思い出します。というか、そのために敷いたのです。小さなテーブルと椅子で夕方お茶をすすります。ターシャ・テューダーさんの影響です。ターシャさんは4時かっきりに庭を眺めながらポーチでお茶を召し上がったそうで、そのとき「ただ生きているだけで幸せ」と思うのだと、TVで仰っていた。なんて素敵な習慣でしょう。ただ生きているだけで幸せ、と思える幸せ・・・。
 




 今ほかに「猫の鼻」に咲いているのは、ワスレナグサとワイルドストロベリー、マリゴールド、テディベアという名のバラ、紫蘭とスズラン、それにまるふく農園さんのレモンローズゼラニウムです。テムズの川岸に打ち上げられたような、傷だらけの古いインク瓶が、どの小花にも似合います。




 猫の鼻ならぬ、小さくて細い猫のヒゲくらいのキッチンガーデンも、現在進行中。ゴールデンセージ、オレガノ、パセリ、大葉が今のところのメンバー。バジルも植えなくちゃ。↓の赤ちゃん苗は種から育てているコリアンダー。近い将来仲間入りします。




 懸案だった椿の木の剪定も、憎っくきチャドクガが襲来する前にと、がんばりました。葉がみっしり茂った中に鳩が巣を作っていたのに気付いたのは、かなり刈り込んでから。この間、屋根にカラスを見かけた理由はこれだったのかも。せっかく途中まで作った巣を台無しにして悪かったけれど、これで良かったのかもしれないとも思う。彼らが若いカップルで、次の巣をつくる余力が充分あることを祈りながら、私の今年の黄金週間は終わりました。

6 May 2017



時を超えるカフェ

 5月のはじめの澄んだ空気。皆さま、いかがお過ごしでしょう。

 小鳥の声や鯉のぼりはためく青い空・・・とはかけ離れた写真で失礼します。4月に、なぜか2度も神保町散策をしたときのことを書きたくて。1回目はあまり時間が無かったので、2回目は詳しい友人に面白いお店などを訊いて、すこしゆっくり歩きました。

 その中のひとつ、これは「ラドリオ」という歴史あるカフェ。夜はバーになるらしい。地図を片手にたどり着いた時の衝撃と言ったら! 実はこのほかにもいくつか聞いたお店が同じくこの迫力で、外国の街へ来たような、いえ、不思議の国に迷い込んだような。

 外から薄暗い店内に恐る恐る目を凝らすと、なんと満席の様子。ランチを目当てにか、お勤めの人たちが、次々ブラックホールに吸い込まれるように入っていきます。

 気になって仕方なく、午後1時を回って再び行ってみる。空席が少しあった。意を決して入店。古いソファ椅子に腰を下ろす。・・・あれ、居心地がいい。なんだか「守られてる感」がいっぱいです。さっきまでの不安がウソのよう。ダニエル・ヴィダル的フレンチポップスが、囀るように流れている。鳥の巣にいるような(いたことないですけど)温かさを感じる。




 ナポリタンを頼みました。タバスコにクラフトのパルメザン、懐かしいですね。写真のトリミングで切れちゃったけど、ぽってりしたマグにスープも付いた、見た目を裏切らない、まさに昭和の喫茶店のお味。

 しかし食後に出てきたウィンナコーヒーは美味しかった。あとで調べるとこのお店、ウィンナコーヒー発祥の地!なのだそうです。パンなのかパックなのか、はたまたミノタウロス? シンボルマークの描かれたカップのデザインにも、歴史と誇りを感じます。





 開店は戦後まもなくだそうで、高齢の父があの近くの大学に通っていた時期には、もうあったことになる。父は貧乏学生だったので、カフェやバーに行くことはあまりなかったらしい。タブレットの写真を見て遠い記憶をたどるような表情をする父に、当時の、おそらくはもっと空が大きかったあの界隈の景色を想像しました。




 神保町には他にも画材店、額縁屋さんなど、興味深いお店があった。巡った本屋さんにもまた行きたい。そしてラドリオも再訪したい。こんどは好きな本を携えて。あの店で「読む時間」を味わってみたいです。