31 Mar 2017



HAC沼津クラス、春の遠足

 昨日は申し分ない、春の日でしたね。

 Hiro's Art Class、略してHAC の沼津クラスでは、一年後のグループ展に向けて早くも始動です。地方都市ではなかなか見つからない素材集めに、そして新たなインスピレーションを得るべく、希望者を募って2班に分け、東京日帰りツアーを企画したんです。昨日はその先行隊5名と一緒に、蔵前~吉祥寺~青山と巡ってきました。

 私がいつも頼りにしている問屋さん、センスのよい素材や雑貨を扱うお店、並木容子さんの gente にも行きました。昨日は並木さんがお店においででいろいろお話を伺うことができたのもよかった。みんな大喜び。

 私は上のムスカリを頂いてきました。店内でもひときわ目を引くアレンジメントでした。この色彩にこの質! 小ぶりな背丈にもかかわらず、花も茎も葉も実にしっかりしていて(私も見習おう)、この様なムスカリを育てるのは簡単なことではないそうです。生産者さんに心を寄せる並木さんの言葉に、耳を傾けました。

 昨夜帰宅後コップに生け、朝起きて見たらすごく自然に、茎がそのポーズを自ら整えていた。夜中じゅうかかって、ゆっくりゆっくり踊っていたのですね。その姿があんまりきれいで、寝ぼけた頭が一瞬にして目覚めました。美しいものの持つ力って・・・。

 パート2も控えてますし、旅の詳細はお愉しみ。お天気にも助けられ、思った以上に充実の愉快な愉快な春の遠足でした。




 最後は、青山。東京メンバーの anzuさん邸へ。お部屋をレンタルスペースとして提供していただき、美味しいコーヒーをご馳走になって一休み&制作の相談など。犬の paseちゃんとも初のお目文字がかなった。

 来週も愉しみです!

25 Mar 2017



ハウス・チョアズ

 家事のことを、英語で 'household chores' とか 'house chores' という。調べると 'chore' には「雑用、はんぱ仕事」という意味のほかに、「面倒な、いやな、退屈な、骨の折れる仕事」ともある。

 家事の中で、私にとって最も「面倒な」のは、夕飯の支度。美味しいものを食べたい気持ちは人並みに旺盛ですし、料理をするのも嫌いではないのに、一日の終わり、仕事からの気分の切り替えがうまくゆかないという理由だけで、むやみにしんどく思う日がある。

 そんなときの一番の助っ人。それは、ベニシアさんのDVDや動画を見る事です。そのために台所に古いタブレットを置いている、と言ってもいいくらい頼り切っている。

 見ていると、ベニシアさんはなんでもゆっくりなさる。のろのろではなく、真剣にゆっくり。そして優しく穏やかに、ユーモアを交えて話される。何ごとも「ねばならない」でやっていないことがじんわり伝わってきて、切り替えに抵抗するイライラ気分がやわらぎ、「仕事」というものの基本を思い出させてもらう。そうして気持ちがいくらか整った私は、おもむろに冷蔵庫を開け、やっとのこと今夜何を作りたいかが見えてくるのです。気付けば、作ったりよそったりを、すっかり愉しんでいる自分がいる。




 山本ふみこさんのことを教えてくれたのは、グループ展のオープニングで、いつもお料理の腕を振るってくださるMさんでした。庄野潤三さんのことが書かれていると言って、山本さんの『台所から子どもたちへ』をプレゼントしてくださった。

 山本さんは庄野先生の本を大切に愛読されている。ブログを拝読するようになって一層それがわかり、毎週更新される「ふみ虫、泣き虫、本の虫。」を、どうやら誕生日の近い同い年、心身に起こる変化も共通することが多く、勝手に一方通行に共感させて頂いています。

 先日のブログには胸が痛んだ。いつも率直な文体で、読者に励ましをくださるふみこさんですが、「お母ちゃま」というタイトルで「母、逝く」と。お母さまがお茶碗を包んでしまっていたという、私にも思い出いっぱいな、昔昔の西武デパートの赤い包装紙の画像も添えられて。

 そしてそんなお辛いときであるのに、ふみこさんはブログの最後に、新刊の『家のしごと』(ミシマ社)の頒布を、前の週と変わらぬ温度でお知らせされていた。迷わず注文。丸善の一筆箋にメッセージの添えらえた、「ヒロさま」のサイン入りご本は、こうして今ここにあるのです。(この頒布は、もう終了されたようです。)

 ヒロさま、と書いてくださったので、私もさっきからふみこさんと書かせていただいてますが、ふみこさんの文章もまた、ベニシアさんマジックと似たエネルギーで、私の家事を応援してくれる、とっておきです。家事をするのも「わるかねえ」(←庄野先生のご長女、夏子さんのご主人さまである邦雄さんの決めゼリフ)と、読むたび思わせてもらえる。

 ずっと前に、まだ妹もここにいた頃のこと、仕事が忙しくて3人分の夕飯の支度がおろそかになり、私は言い訳に「だって忙しいんだもの」と言い放ったら、父が「そんな仕事だったらやめちまえ!」と、珍しく語気を強めたことがあった。その時は娘の仕事に無理解な父へ猛反発。こちらもカッカッと来たけれど、後になればなるほど、父の言葉にうなずく自分がいます。

 ジョン・レノンが言っていた。読書するのは、自分が独りぼっちじゃないと感じられるから、と。自分は一人じゃないという感覚。ベニシアさんとふみこさんの著作からおおらかな家事魂を授けてもらい、私は今日も大好きな台所に立つのです。




 ・・・とは言っても、家事に時間を無制限にかけるわけにもゆかず、ですね。↑は私のまかない飯。搾菜のパスタです。ムサ美の頃、男子の友だちに教えてもらった。茹でたパスタに、大根おろしと刻んだザーサイを載せて、ごま油とお醤油をたら~り。ゴマと刻み海苔をかけて、ただそれだけです。美味しいです。




 料理家の土井善晴さんが近年提唱されている「一汁一菜」にも、肩の荷を軽くしてもらいました。夕飯に何を作ろうかどうしても迷ったら、具沢山のお味噌汁を作ります。土井さんは、日本人の食事はみそ汁とご飯があればいいのだと仰っていて、とりあえず具になりそうなお野菜だけは、いつも野菜庫や、芋類用の甕にストック。「やめちまえ!」の父にも、食べやすく好評です。

 ↑は、前夜の残りとおにぎりのお昼ごはん。

20 Mar 2017




昨日の明日館

 今年のレッスンのテーマは「ファッション」。

 ファッションについて考えるのは愉しい。毎朝、何を着ようかと考えることは一日の活力の源にさえなります。特に女性は。

 と書くのも、今夢中で読んでいて、読み終えるのが惜しくてたまらない奇想天外小説、バージニア・ウルフの『オーランド―』。男性から女性に、しかも時代を超えて変身する主人公が、女性になったとたん服を着替える事、着替える事。それは男性だった頃には考えられないような経験とあるので、ふーん、男の人たちってやっぱりそうなのかと思った次第なのです。(もちろん、男性にも女性にも例外はあるけれど。)

 我らがHACは女性ばかりのクラスですから、前回の靴も、今回の(花の)帽子も、テーマとして好意的に受け止めていただき、先日の沼津、昨日の東京と、期待以上に愉しんでもらえました。カラフルな作品がいっぱい生まれた。ご参加、ありがとうございました♪

 来月4月はボタンをテーマに、水彩を使って遊びます。月末までの講師の宿題は、サンプルの目鼻を整えること。頭の中にぼんやりイメージはあるので、それをこれからよりクリアにしてゆかなくちゃ。どうか愉しみに待っててくださいね。




 昨日の明日館。帰りがけ、日が傾いてしっとりした空気の中、新郎新婦をカメラマンが撮影していた。桜の固いつぼみを仰ぐ前庭にて、白いドレス姿の美しかったこと!
 

18 Mar 2017



春の花

 とうとう最後のふた切れになってしまった、銀座のグループ展、オープニングの名残りパン。

 ツナのパテにいつも入れるケイパーが切れていたので、グリーンオリーブを使ったら美味でした。レモン汁代わりの塩レモンも効いた。(いつもは、ツナ缶の水気を絞るように切ったのと、玉ねぎとケイパーとレモン汁とマヨネーズをフードプロセッサーでガーッと和えるだけのカンタンパテ。)

 スーパーで買う菜花の中から、開花しそうなのをいつも数本選び、花瓶に生けます。食卓にも、玄関にも飾ります。袋の中で縮こまっていた反動か、あっという間に開きます。

 菜の花を見ると、小学6年生の時特訓された「おぼろ月夜」のピアノ伴奏の練習を思い出す。それとその翌年、中学へ通った道の途中にあった、菜の花畑とその香りも。

 菜花は、辛し和えか、またはごま油でジュッジュッと押さえながら炒めて、軽く塩コショウしていただくのが好き。




 今年のヒヤシンスは想いを込めて、トリコロールにしました。水栽培で育て愉しみましたが、そのうち花の重みでお辞儀しだしたところを切り花に。右は今が盛りの tete-a-tete。「ないしょ話」という愛らしい名で呼ばれる、黄水仙です。

14 Mar 2017



シュープリーズ

 私としたことが、こんなに長くブログを書かずにいたのは、初めてかもしれません。Instagram があるからかもですが、本当はもっとこちらにも書きたいことがあったのでした。

 青空と梅の花が、ゴッホが描いたアーモンドの花の絵のようだったこと。朝の散歩で小さなホトケノザの縁に、びっしり付いた霜がきれいだったこと。クロッカスの花が咲いたこと。フキノトウを今年は採り忘れたこと。Yさんから絶品の「な海苔」を頂いてご飯がすすんだこと。などなど。でも時間がなかった。銀座のグループ展の準備と時を同じくして、例によって家族の用事、例によって自分もアレコレ、例によってスケジュールが許容範囲をかなり超えていました。

 だから、無事に会期を終えられたこと、しかも作品がお客さまに好評で、今まで以上に手ごたえのある会期を送れたことが、本当にうれしい。最終日の翌朝の目覚めのよかったこと!


 これは、いつも得意料理を披露してくださる、Mさんのセンス一杯、オープニングのテーブルです。実はACギャラリーが今までより若干コンパクトになったので、メンバーだけでスペースが満員になることが予想され、今年は内輪のパーティとさせていただきました。御覧の通りの超・ご馳走で、ハッピーにスタートを切ったのは先週の日曜でした。


 シュープリーズと呼ばれる、パンの中にサンドイッチがぎっしり詰まったパンがあります。上の写真のラウンド型、おしゃれなブルーのリボンが結ばれているのがそれです。見た目はもちろん、4種類の中身も素晴らしく美味しいサンドイッチでした。

 その外側の容器のパンを頂いて参りました。残りのチーズがまた! 蜂蜜をかけて、胡椒をガリガリやって、毎朝こんな贅沢な朝ごはんを食べて、一日おきにギャラリーに出掛けました。

 今回の私は放任主義のお母さんのよう。メンバーの皆さんにほとんどお任せで制作していただいた。行き詰ったり迷ったりしたときには、軽く塩コショウ、くらいのアドバイスをさせてはもらったけれど、ほんとにちょっとだけ。その結果、素晴らしくそれぞれの「らしさ」が表れた力作が揃ったと思います。ありがたいことに、多くのお客さまから勇気をもらう言葉を頂き、今回で5回目のグループ展ですが、そして毎回思うことなのですが、今までで最高の会になりました。

 ご来廊下さった皆さま、本当にありがとうございました。ご覧いただくことによって、また次に進むことができます。


 そしてのんびりする間もなく、3月のレッスンがもう今週。会期中の午前に素材集めをして、さっきやっとサンプルと作り方の方向が↑のように決まりました。間に合ってよかった! いつにも増して、スリリングなタイミングです。

 今回はグループ展が重なって、とはいえ、そんなにスリルを味合わなくても済むように、ひと月ふた月前に準備をしたら、とお思いの方もいらっしゃるかと思います。しかしそれがどうしてもできない。その訳はこの私の「作りたい」気持ち。これに湯気が出ているうちに皆さんにお伝えしたいという、わがままな思いからです。多岐に渡る素材をレッスン時に人数分集められるか、という実際的な理由もあるにはあるけれど、それよりもやっぱり「作りたい」自分の熱が、一か月の間に冷めてしまうのを好まないのですね。

 同じ理由で、一度やった課題は基本的に繰り返さない。自分の中で終わってしまったものの面白さを、100%人に伝えることは難しいから。

 こんな私のわがままを許してくださり、毎回レッスン冒頭、出来立てホヤホヤのサンプル(時には未完成)に歓声を上げてくださる冒険好きの生徒さんたちに、心から感謝しています。きっとびっくり箱を開けるような気持ちで、レッスンにいらしてくださっているのだと思います。そんな皆さんのためにも、次回はもっと愉しい課題を!と思えば、また新しいアイデアが生まれてきます。

 びっくり箱と、シュープリーズ(=Surprise=ビックリパン)。話の辻褄が合った(?)ところで、今日はこのへんにて・・・。