29 Jan 2017



ニュースを見て

 今日は本当に久しぶりに、心解き放たれる思いがした。こんなニュースを心底見たかった。カナダのトルドー首相のツイッターより。


  To those fleeing persecution, terror & war, 
  Canadians will welcome you, 
  regardless of your faith. 
  Diversity is our strength.                         


  迫害、恐怖、戦争を逃れようとしている人たちへ。
  信仰にかかわらず、カナダ人はあなたたちを歓迎する。
  多様性は私たちの力だ。

                    Justine Trudeau

 
 写真は、2015年にシリアから到着した難民を迎えたときのものだそうです。
 

17 Jan 2017





初レッスン

 2017年が始まって、早半月以上。「早」を、ハタチの姪の真似をして「ハヤ!」と言いたくなるようなこの2週間でした。

 今月のレッスンは予告通り、アートジャーナル。その表紙の制作。ベースのスケッチブックには、イギリスの気に入っているものを取り寄せました。同じメーカーで別のものは(信じられないような値段で)輸入販売されていますが、このハードバックのものはみつからない。しっかりした作りなので、コラージュをしてパンパンになっても、毅然としたスケッチブックの存在感を失うことのない、そんな一冊です。(大袈裟ですね。)

 これに、まず古い紙を貼り付けたい。紙素材は weekend books さんで知り合った、小平のアンティークショップ、プチミュゼさんから、忙しい年の瀬に分けていただいた。1890年ごろのフランスのモード雑誌です。表紙は↓のように華やかですが、今回のキットには中身の地味なページを加えています。




 アルファベットは、記号として魅力的な文字だと思います。でも横文字ならばなんでもいい、とは思わない。今年の HAC のテーマは「ファッション」なので、やはり関係のある何かでないと。東京のクラスでは連載小説でしょうか、恋愛のメロドラマチックなイラストレーションが描かれたページを引き当てた(?)方たちや、刺繍のお好きな方にクロスステッチの図案のページが行くようにトレードしてもらったり、もうその時点でおみくじ気分と言いましょうか、ひとしきり盛り上がりました。

 グループ展の準備や'Q&A'など、いつも以上に忙しい・・・のは私だけで、皆さん手際よく、いつもより早めに仕上げられました。表紙のデザインはお家に帰ってから。今頃、ああでもない、こうでもないと、悩まれている頃と思います。

 私もこのボタンのハートに後から金のトリミングを巻いたりして、work in progress、「まだ途中」の状態を愉しんでいるところ。




 表紙は洋服と同じように大切だと、作りながら思いました。このいでたちに似合う明るい一日を送ろう!とか、この表紙に見合う造形をしよう!というエネルギーの源になる。中身と表紙、全部で一つの作品になるような、そんな試みをしたいと、自分は幼い頃からずっとずっと願って来たんじゃないかと、はたと気付いたりもする。

あと数日で就任する新アメリカ大統領に対し、暗にとはいえ果敢に物申した女優のメリル・ストリープにはぐっときましたが、下の言葉はいつ頃のものでしょう。同じくストリープによるもの。



 Integrate what you believe in every single area of your life.

 人生のあらゆる分野においてあなたが信じるもの、それらを調和させるのです。



 この一冊(または一生、または世界)が作者の夢でいっぱいになって、この一冊(または一生、または世界)が一つの作品として調和して、この一冊(または一生、または世界)が表現の喜びに満ちたひとつの塊として、ここに永遠に存在しますように。

 (どうやら初レッスンも舌も、上々の滑り出しです♪)




9 Jan 2017



人はなぜ絵を描くのか

 先日、上野の科学博物館で、小学生の甥と姪たちを連れ、ラスコーの壁画展を観てきました。とても面白かった。歴史の教科書か、美術の教科書か、どちらかで漠然と知っていたこの2万年前の動物の絵。おそらくは何人もの絵描き(?)たちによって、永い時を経て描き継がれていった絵。画家の個性の違いも興味深い。それよりなにより、遠い昔のクロマニヨン人の手によって描かれた壁画のレプリカや映像を前に、まず素描、描写力の高さに圧倒された。

 光の届かない、暗い洞窟の奥深くに、頼りない獣脂ランプの灯りだけを頼りに、また鉱石をつぶして得た貴重な絵の具で、あんなに大きな絵が、いったい何の目的で描かれたのか。ネットで調べても、その定かな理由はみつからない。動物への畏敬、祈り、呪術的な目的、さまざまな仮定はできても、本当のことは誰にもわからない。

 中に、「教育」が目的であったのではないかと書いている人がいた。子どもたちに狩猟の技術を教えるためではないかというのです。私はまったくの無知の素人だけれど、なんとなくこの考えが弦をはじくようにピーンと胸に響いた。

 奥深くに描いたのは、住居を兼ねる入り口付近では、煤や天候で絵が傷むからかもしれない。奥であれば、先祖の知恵を長く残すことができる。農耕文明の始まりはまだ先。狩猟は生きることのすべて。そして暗いとはいえ、昔の人類は、今より目がよかったのではないかしら。わずかなランプの光でも、その図を見て理解することができたのではないかな。

 そもそも目がよくなければ、動く野生動物たちのことを、あんなに写実的でダイナミックで、デッサン力高く描くことは難しいし、またそこに魂を吹き込むこともできないと思う。

 そこで言語のことが気になった。人はいつ頃から言葉でコミュニケーションができるようになったのだろう。これもまた誰にもわからないことだけれど、7万5千年前くらいにはネアンデルタール人、そしてこのクロマニヨン人たちも、素朴な言語を使っていたという意見が定着しているようで、だとしたら時が進んだ2万年前には、原始の言語も少しはソフィスティケートされていたのではないか。

 言語が進めば、想像力は、どんどん羽ばたいていったと思う。絵の表現力も同時に進んでいっただろう。もちろんまだ文字は登場しない。ずっとずっと先。

 こんな話をふと思いだした。

 文盲のある高齢の女性が、思い立って字を習い始めた。一昔前にはまだそういう方も日本にはいた。彼女が言うには、「『夕日』という字を覚えたときの感動が忘れられない。この字を読めるというそれだけのことで、以前とは夕焼け空の見え方が、まったく変わったんです。」

 子どもが初めて鉛筆で、またはクレヨンで絵を描くときのように、絵の具が石の壁に着く感触の単純な快さから始まり、表現力が高まれば仲間がそれを見て素朴な言語を発し感動する。よろこんでくれる。自分はもっと描くべきかもしれないと思うし、仲間もそれを希望する。子どもたちもそれを見て、まだ見ぬ世界について大人たちに質問する。壁画を描くキャンバスは、洞窟の奥へ奥へと・・・。

 こんな自分勝手の想像を、果てしなく許してくれる、実に、本当に、面白い展覧会でした。

 壁画以外にも、クロマニヨン人の作る道具類の細工のすばらしさと、彼ら自身の姿のレプリカがとても興味深かった。

 その姿は、昨年パリで開催された際の様子が見られる、こちらのサイトからご覧いただけます。彼ら、まるでヒッピーみたいでカッコいい。というか、ヒッピーが真似をしていたのですね。遠くの獲物を指さしているかのような勇ましい女性のポーズにはまって、甥や姪と真似をしながら歩いた。

 それとフランスの文化・通信省が作っているラスコー洞窟のサイトが迫力! ご興味があったら、必見です。さすがのお国柄。想像を掻き立てられるウェブデザインに、文化への誇りが感じられてうらやましい限り。(注: 洞窟の不気味さがまんべんなく表現されています。怖がりの方はなるべく昼間にご覧くださいね。)

2 Jan 2017



あけまして おめでとうございます

 2017年が始まりました。皆さまにとって穏やかで健やかで、またこの地球が今より少しでも平和な世界になりますようにと祈りながら、また一年、よろしくお付き合いくださいませ。

 今年はカレンダーばかりでなく、クリスマスカードも年賀状も、都合で欠礼させていただきました。身内に不幸があったわけではないので、どうかご安心ください。前回のブログにも書きましたように、自分のメモリー残量のせい。お恥ずかしい限りです。

 その代わりに、↑のような画像を作ってみました。今年は酉年。いろんなニワトリの資料写真を見ながら、一番ふくよかであったかそうなこのコ (年に200個は卵を産むという Buff Orpington という種類で、今のエリザベス女王の母君、クイーンマザーのお気に入りだったとか・・・)をモデルに描いてみました。

 3月には、また銀座で東京クラスの生徒さんたちによるグループ展を開催します。またまた力作が並びます。少しずつ会場のイメージを作ってゆきながら、まもなく案内状の準備も始めます。

 しつこいようですが、HAC(Hiro's Art Class) の今年のテーマは「ファッション」です。その企画のアイデア出しも、愉しみで仕方ありません。

 またこれは少しというかだいぶ先なのですが、2019年の4月に、私としてはかなり大規模な個展をさせて頂くことになりました。場所は三島市のさんしんギャラリー「善」。三島信用金庫本店のレトロモダンなビルディング。そのトップフロアにある、美術館の一室のように広い立派なギャラリーです。佐野美術館が企画運営をなさっていて、お世話になります。

 素晴らしい機会を頂き、これから時間をかけて新作をこつこつ制作してゆく。そのことがとてもとても愉しみな今年です。