21 Sept 2016



おまじない

 こちらの芝は貫禄のグリーン。明日館の前庭です。イベントの時以外は立ち入り禁止で、大事に手入れされている。結婚式の記念写真に、申し分のない背景ですね。

 先日の東京クラスの日、近づくMALAKAS(台風16号)のせいで、エアコンONの教室内まで尋常じゃない湿度でしたが、大きな桜の木と歴史に守られたこの建物にいると、何があっても大丈夫という安心感に包まれます。

 この日は私がかつて描いたイラストレーションをサンプルに、小さな雑貨を描く練習。そしてそれをカードや封筒にアレンジする練習をしました。(沼津クラスでは来週29日に同じ課題を行います。)
 



 水彩を言葉だけでお教えするのは、正直不可能と思っています。絵は頭で描くものじゃないですから。でも、皆さんのお机のそばに行って、その方の絵の具、その方のパレットを使って、その方だけのために間近でデモンストレーションをすることで、エッと思うほどの変化が起こることがあります。(そんなときは、心で小さくガッツポーズをしています。)

 絵を描くことの基本は、当たり前ですが、やっぱり「観る」ことなのですね。そして「感じる」こと。絵具の溶き方、筆への含ませ方、筆を運ぶときのリズムとか勢いとか、(小池知事じゃないけど)「スピード感を持って」描くこととか、すぐ近くでご覧いただくと、きっと何かの印象がその方に残って、「その気」がぐっと刺激されると思うのです。

 じゃあ、マンツーマンがいいかというと、そうでもなくて。自慢じゃないですが、東京も沼津もすごくリラックスした、愉快な、ちょっとしたバラエティー番組みたいなクラスで、笑いのつぼみが春のタンポポみたいにそこここで開いてる。肩の力がまず抜ける。これは何より大事なことだと思います。




 どうやったら絵が上手になるかな、よりも、どうやったら私が絵を描くことで得ている素晴らしい経験をお伝えできるかなと、いつも考えています。観ることが発展してゆけば、おのずと手もついてゆきますから。だからまずは、そこに近づくジャンプ台のようなものを、毎回考えて提供してゆきたい。

 次回10月のテーマ=ジャンプ台は、「ファッション」。現在いろいろ考え中。お申し込みがまだの方、沼津クラス(10月20日)には少し余裕がありますので、ご連絡を待っています。

 「好きなように描いて 幸せに死ね」は、晩年に絵をめちゃくちゃ描きまくった、作家のヘンリー・ミラーの言葉で、私にとって肩の力がストンと抜ける長年のおまじない。好きな言葉です。




私の夏の自由研究

 雨ばっかりで、皆さま、体調はいかがですか?

 気分が多少どんよりはするものの、頭痛などは起こらない私でも、この雨のせいで悩まされていることが一つ。今年の夏の自由研究、「芝生を育てる」がまさに水泡に帰すんじゃないか・・・と、気が気ではありません。

 「茶色い地面派」の家族をそれとなく説得し、初めて西洋芝の種を蒔いてみたのです。この貧弱な庭に芝が育つのか、いまいち確信が持てないため、安上がりの種作戦。

 蒔いたのは8月はじめでした。まずは土を掘り返し、ほんとは少なくとも深さ15センチは耕すこととあったんだけど、ズルして10センチくらい。そこに肥料を混ぜ込んで、種をぱらぱらと蒔きました。

 さすがイネ科だけあり、目ざといアリたちにずいぶん横取りもされましたが、3日ほどで可愛い芽が出始めた。うれしかった。お日さまの黄色い光を浴びてすくすくと順調に育つ。いい感じです。何度か上のほうを刈ってみたりもした。そうすると枝葉が出てくるらしいので。ひと月したら液肥がいいと読めば、その通りにして大事に育てていました。この調子この調子と安心していた。

 ところが台風や雨が連続し、まだひ弱な葉っぱたちがところどころぺちゃんとなってしまった。それでも日が差せばいくらか立ち直るんだけど、またまたこれでもかの雨攻撃。しかも強雨で、天気予報の連続傘マークがまったくもう!って感じ。がんばれ、西洋芝!

 しかし昨日のような大雨の日には、イモ子ことキアゲハ嬢は、どんなところで雨宿りしているのでしょう。
 

6 Sept 2016



季節のうつろい

 9月に入っても、まだまだ蒸し暑く、ご近所さんと行き会えば、そんな会話をいつまでも飽きずに繰り返しています。それでも季節の時計は、間違うということがない。新生姜の季節です。JAの直販所で一束買ってきて、お昼にお味噌を付けて食べました。辛い。残暑にしおれていた背筋が、シャンとしました。

 根生姜も直販所では安く手に入る。今までは、ある料理家オススメの方法、台所の棚に掛けたカゴに入れて保存していたのですが、カビが生えない代わりにすぐ乾燥してふにゃふにゃになってしまう。もったいなかった。料理家の人ほど、消費のペースが速くないのが理由だと思う。

 インターネットで調べると、瓶やタッパーに水を張って、そこに洗った生姜を入れ冷蔵庫へ。数日おきに水を替えていればひと月も持つのだとか。まだまだ知らない知恵がいっぱいあってうれしい。さっそく試しています。うまく行きますように。




 若い頃に読んだ、画家の有元利夫さんの本のなかの「配達される才能について」というエッセイに、家の中の5か所ほどに必要最低限の絵を描く道具を置いていた、という話があります。それを思い出したのは、台所でも絵が描けるように、上のような絵具箱をテーブルのすみっこにセットした後でした。

 無意識にでも有元さんからの影響を、かれこれ30年くらい引っ張っていた自分が、物持ちのいいおばあさんみたいで可笑しくなります。

 有元さんは、「自分を信じていない」と書かれている。画室に行かない限り、自分は絵を描かない人なんじゃないか、と。それでパンケーキの水彩絵の具と水入れを5セット、家中に置いてあった。

 それを聞いて、友人が反論する。

 「それは一種の不信感かもしれないけれど、もっと大きなところ、レベルの違うところでは信じているのではないか。・・・いつも受け入れ態勢を整えておけば、必ず『天命』は来ると信じているだろう」

 そう詰め寄られた有元さんが、「まあね」と答えるしかなかったとあるのもいい。それを自分の「開き直り」と締めくくっているのも、恐れ多いけれど共感します。

 この『女神たち』と言う本、もう一度読み直そう。
 



 さて、前々回のブログに書いたイモ子のその後です。一昨日、とうとうこのような美しいお姫さまに生まれ変わりました! 朝起きて、すぐに発見しました。羽化後間もなくと思われます。

 目の当たりにすると、こんなにも感激するものなのですね。幼い頃に観た蝉の羽化以来。その「瞬間」に立ち会えなかったのは残念ですが、はらぺこムシャムシャ芋虫だったあのコが、と思うと、魔法を掛けられたような思いと親心みたいなのがないまぜになって、たまりませんでした。

 1時間ほどこうしていたでしょうか。少し目を離した間に、どこかへ飛び立った。その時のロス感と言ったら!

 でも昼過ぎに花の水やりをしていると、ものすごい活発に飛び回るキアゲハが一羽。ああ、挨拶に来てくれたのか、または羽化ポイントからそう離れることなく活動する習性なんでしょうか。とにかくうれしかった。

 インスタグラムにアップしたら、この夏4羽も羽化をさせた方がコメントを寄せてくださった。来年は私もやってみようかな。夏の間は山椒の木に、いつでも幼虫がみつかりますから。パセリの大鉢を準備して・・・。